下町にある昔ながらの小さな釣具店。薄暗い番台で、電卓を叩くおばあさんの周りには、魚釣りの針や糸が所狭しと並んでいる。
「キャッシュレスで5%還元じゃないっすか。あれ、使えます? なんちゃらコードってやつ。あのスマホのやつ。あっ、カードがあった!」
釣具を買いに来たバナナマン・日村勇紀がクレジットカードを差し出すと、おばあさんはニコッと笑顔。取り出したリーダーにカードを差し込んで、ピッと簡単に支払えた──。
10月1日から始まった、政府による「キャッシュレス・ポイント還元事業」のCMのワンシーンだ。日村の言う通り、中小の小売店で「現金を使わないキャッシュレス決済」で支払うと最大5%のポイントが還元される仕組みである。
一言でキャッシュレス決済といっても、クレジットカードや電子マネー、スマートフォンのQRコード決済など、その方法はさまざまだ。
日本は“キャッシュレス後進国”と呼ばれ、大半の人の日常の買い物は現金払い。ただ、世界はかなり進んでいて、たとえば中国のキャッシュレス率は60%にも達する。来年の東京五輪も睨んで、日本も政府主導でキャッシュレス化が進められていて、実際、冒頭のCMのように、小さな商店でもキャッシュレス決済ができるところが急激に増えている。
たしかに面倒くさい。現金の方がわかりやすい。それでも、意を決してキャッシュレス決済に挑戦してみた埼玉県の主婦・菅井敬子さん(61才)は、「日常が劇的に変わった」と語る。
「夕食の買い物に出かけるのに、家に財布を置いていくのはかなり新鮮です。手にはスマホだけ。レジに並んでも、ジャラジャラと小銭を探すこともなくなり、スマホを“ピッ”で終わりです。
慣れてくると、“この商店なら5%お得”とか、“あのコンビニなら2%”とか、“このクレジットカードからスマホにチャージするとプラス1.5%”とか、ポイントをためるのが楽しくて仕方ないですよ」