予約キャンセルに騒音トラブル、立ち小便まで、同じ行為をしながら“逮捕される人”と“逮捕されない人”という微妙な「境界線」が存在する。逮捕につながる線引きは一体どこにあるのだろうか?
“ちょっとしたズル”が逮捕につながる場合もある。2015年に茨城県警に逮捕されたのは当時49歳の男。県内のスーパーで、人気のまばらな深夜、持参したポリ袋に14kgもの氷を詰めて持ち帰ろうとして御用となった。容疑は窃盗罪。
そもそもこの氷は店側が無料でサービスしているもの。スーパーなどでは他にも割り箸やストロー、砂糖など無料で持ち帰ることができる品があり“少し多めに拝借した経験”は、誰しも一度や二度はあるはずだ。
男が逮捕されたのは、14kgもの度を越えた量を持ち帰ったから……と思いきや実はそうではない。弁護士の鈴木淳也氏が解説する。
「氷〇kg以上など、数量による明確な線引きは難しい。このケースでは、製氷機に貼り紙で『備え付けの袋2つまで』と上限が指定されていました。それを超えた時点で店側の意思に反するのは明らか。『店側の意思に反するかどうか』が窃盗罪になるかならないかの分かれ目です」
店員からの注意を無視すれば、それもまた「店の意思に反する」行為となる。では、無料持ち帰りの制限が貼り紙などで明示されていない場合はどうなのか。
「上限のあるなしにかかわらず、“(購入した商品の種類や数量に対して)常識的範囲”を超えて持ち帰れば、店の意思に反すると指摘できる。窃盗罪の可能性が出てきます」(鈴木弁護士)
※週刊ポスト2019年12月13日号