親の死を悲しむ間もなく、相続に頭を抱える人は少なくない。遺言書を作成せず、故人の財産を把握していなかったために、大損するというケースもある。
山梨県に住む主婦の牧野さん(仮名、67才)は、ひとり暮らしの母親の死後、生命保険の保険証券を血眼になって探した。
「生前、母は『私が死んだら1000万円を受け取れるからね』と話していました。てっきり保険会社から連絡がくると思って待っていたのですが、待てど暮らせど連絡がない。
でも、私から連絡しようにも、どこの保険会社の、なんという保険かもわかりません。引き出しや畳の下など家中捜しましたがとうとう見つかりませんでした。それから4年、いまだに保険金は受け取れていません」(牧野さん)
保険金は、自分で申請しないと受け取れない。どこの会社の保険かがわからなければ、永久に受け取れなくなる。これまで1万4600件以上の相談に乗ってきた、相続コンサルタントの曽根恵子さんが話す。
「生命保険は、相続人1人当たり500万円までなら非課税で相続できます。そのため、相続税対策として活用する人は多いのですが、保険に加入して安心してしまい、必要な情報を相続人に伝えていない場合も多く見受けられます」
保険金受け取りの時効は原則3年までだという。これを過ぎると保険会社との交渉次第になる。牧野さんは、1000万円をまるまる受け取れないまま、保険料だけを払って大損した。
「生前、すべての財産を『財産目録』に書き出しておくことが大切です。預金や保険のほか、自宅や賃貸用の不動産、有価証券などをリストアップしておきましょう」(曽根さん)
※女性セブン2020年1月2・9日号