遺産を巡る骨肉の争い、いわゆる“争続”の件数はこの10年で1.5倍に増えた。その“争族”の代表的な要因であった「遺言書」の様式が、2019年の法改正で改善された。相続コンサルタントの曽根恵子さんが話す。
「遺言書とセットで作成する財産目録は、これまで手書きで書く必要がありましたが、パソコンで作成できるようになりました。遺言書も法務局で保管できるようになり、手間や煩雑さが大幅に改善されています」
だが、便利になった分、トラブルも起きやすくなる。埼玉県に住む主婦・神崎さん(仮名、58才)は3人姉妹の長女。昔から両親に特にかわいがられ、1人だけアメリカ留学させてもらえたり、マンションの頭金を出してもらったりと特別扱いされてきた。だが、両親の死後、妹たちの長年の嫉妬心が一気に噴出した。
「母の亡き後、父もその3年後に肺がんで亡くなりました。父の死後、遺言書を見てとても信じられませんでした。私の名前はどこにもなく、財産は妹2人にだけ相続させると書かれてあったのです。
どう考えても妹2人が結託したのは明らかです。父は亡くなる直前話すこともできませんでしたから、強引に遺言書に署名させたのでしょう」(神埼さん)
このケースについて、曽根さんはこのようにアドバイスする。
「大前提として、遺言は生前に相続人となる人全員が集まり、オープンに話し合うべきです。それがトラブルを防ぐ最善の方法です。
心配な人は、自筆で遺言書を作成するよりは、公証役場で作成する『公正証書遺言』が確実でしょう。公証役場の費用が約10万円、証人も2人必要などハードルも高いですが、揉めないために検討するのも有効です」
※女性セブン2020年1月2・9日号