小池百合子・東京都知事と森喜朗・東京五輪組織委員会会長は「五輪のレガシーを残す」と繰り返すが、“負のレガシー”が残されることにもなりかねない。北京五輪やリオ五輪では、新たに作った施設に閑古鳥が鳴いているものもあるのだ。
東京の場合、その筆頭候補が、1569億円を投じて完成した新国立競技場だ。年間の維持費はなんと24億円と試算されている。施設を管理する「日本スポーツ振興センター」(JSC)は五輪後、運営権を民間に売却する方針だが、高額の維持費用がかかるとあって、売却の目処は全く立っていない。
運営権の買い手がつかなければ、年間24億円のコストはJSCが負担し、赤字が出れば税金で穴埋めすることになる。
利用者が少なく、税金で維持費を出せなければ、“廃墟”への道を突き進むことになる。
そのリスクが心配されるのは葛西臨海公園の隣に73億円で建設されたカヌー・スラロームセンター(7500人収容)だろう。水の流れを人工的に作り出し、カヌーを巧みに操って下るタイムを競う種目だ。
東京都は同センターの利用者を年間10万人、年間収支は1.86億円の赤字と見込んでいるが、国内の競技人口は300人台とされ、自然河川を利用した競技場は全国に20か所以上ある。リオでも北京でもスラローム施設は廃墟と化している。
東京湾の中央防波堤埋立地に約300億円をかけて整備された「海の森水上競技場」も危うい。
ボート競技やカヌーのスプリント競技の会場となるが、昨年のジュニア選手権では観客席の一部に屋根がないために熱中症で運ばれる選手や観客が続出した。公共交通アクセスも悪い。
東京都はこの施設の赤字を年間1.6億円と試算するが、ボート競技は国内の競技人口も多い代わりに競合会場も多い。五輪後は敬遠されて“開店休業”の可能性がある。