新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、日経平均株価が1万8000円台、米ニューヨークダウも2万3000ドル台と、いずれも直近高値から2割超の下落幅を見せるなど、世界の株式市場を「コロナ・ショック」が襲っている。はたして今後の展開をどう読み解けばよいのか。
3月9日に米ニューヨークダウが一時2000ドル超と過去最大の下落幅を記録したのは、「コロナ・ショック」に「原油安」が重なったことが大きい。新型コロナウイルスの感染拡大が実体経済に影響を及ぼし、原油の需要が落ち込むと見られる中、3月6日に開かれたOPEC(石油輸出国機構)とロシアの協議「OPECプラス」が決裂。ロシアが原油の減産を拒否すると、サウジアラビアがシェア拡大のために増産と価格の引き下げを決めたと伝わり、原油価格が急落。原油価格の国際的な指標である米国産WTI原油の先物は9日に3割近くも下げ、4年ぶりに一時1バレル=28ドルを下回った。
原油輸入国である日本にとってはガソリン価格が下がることから歓迎の声も聞こえるが、そう単純に片づけられる話でもないようだ。グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏は、次のような見方を示す。
「ロシアとOPECの減産協議が物別れに終わった背景には、ロシアが減産を拒否して原油価格を下げることで、採掘コストの高い米国の『シェール業界』に打撃を与えたい思惑があるようです。サウジアラビアによる急激な価格引き下げは、ロシアを交渉のテーブルに引き戻したいという意向もあるかもしれませんが、ともあれ、原油価格は目先軟調な価格推移が続きそうです」
米国では、地下深くのシェール(頁岩)層に含まれる原油(シェールオイル)や天然ガス(シェールガス)の採掘技術が発展。2010年ごろから生産が拡大し、産油国となった米国のシェールオイルの生産コストは30~50ドル程度といわれ、それを下回ると米シェール業界は採算割れに陥るとみられている。ロシアが拡大続く米シェール業界を狙い撃ちしたという見方だ。