新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、私たちの生活は大きく変わった。緊急事態宣言や自粛要請を受け、企業や個人が機能を維持するために外出制限やテレワークなどさまざまな努力をしたことで、そのひずみも出てきている。
「テレワークうつ」という言葉が知られるようになってきた。当初は一様に「地獄の痛勤ラッシュから解放された」「家族との時間が増える」「ラフな服装でいいのでラク」などと歓迎の声であふれていたが、それに疲れた人が少なからず現れているのだ。その原因は、まさかの“自宅での長時間労働”。
働き方評論家で千葉商科大学准教授の常見陽平さんはこう分析する。
「在宅型テレワークの利点は、通勤時間がなくなり、自分の裁量で自由に時間を使えるようになったことです。その一方で、残業時間が虚偽でないかチーム内で相互監視したり、ひどいケースだと“リモートワーク中は24時間パソコンのカメラをONにしておけ”と命令されたという話もある」
NPO法人「ほっとプラス」理事で社会福祉士の藤田孝典さんもテレワークには問題が多いとする。
「会社に出勤せずに家で仕事をするとなると、プライベートとの境目がなくなり、長時間労働につながりやすい。特に女性は家事や育児、介護を含めていろいろなことを押しつけられやすい。職場に行けば解放されていた家事や育児の負担が増え、同僚とのコミュニケーションもなくなり、ストレスがたまり続ける。心のバランスを崩す人も女性に多い印象です」
“リモートパワハラ”のほか、オンライン会議で「部屋をもっと見せろ」「家ではそういうメイクなんだね」などといった“リモートセクハラ”も表面化しつつある。
「本来、テレワークは“365日在宅で働く”のではなく、“仕事内容や状況に合わせて家か会社かを選べる”働き方のこと。何より、日本の労働法制がテレワークを想定したものになっていない。今後テレワークを当たり前の働き方としていくうえで、それらの整備は急務です」(常見さん)
※女性セブン2020年7月2日号