日本有数の歓楽街・銀座で、コロナ禍の苦境を象徴するような“売却劇”が起きた。ソフトバンクグループ(以下、SBG)の孫正義会長兼社長が、個人資産として保有していた「ティファニー銀座本店ビル」を売却したと報じられたのだ。
SBGは2020年3月期の営業利益が1兆3500億円の赤字となる見込みだと発表。5月の決算発表では、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の損失額が1兆8000億円に達する見通しも示していた。同ファンドの投資先企業からは、コロナ禍で倒産が続出する可能性が指摘されている。経済ジャーナリストの有森隆氏はこうみる。
「個人資産のビルを売却することで、投資家や金融機関に対し、襟を正す姿勢を示そうとしているのでは。SBGへの出資者は痛い思いをしているが、孫氏も身を切っているという“アピール”だと受けとめました。
売却先は不動産大手のヒューリックで、売却はみずほグループが仲介したと報じられています。みずほ銀行はSBGに1兆円近くを融資しており、ヒューリックも旧富士銀行の店舗ビル管理から出発した会社で、みずほ銀行から出向している役員も多い。この売却劇を、みずほ銀行がSBGから少しでも資金を回収しようという動きだと見る向きもある」
そんな孫氏を横目に、6月19日、銀座に大型新店舗「UNIQLO TOKYO」を出店したのがファーストリテイリングの柳井正会長兼社長だ。
柳井氏は昨年までSBGの社外取締役を務め、孫氏については「ずっとライバルで同志」と言及するほど交流が深い。