株式、債券といった金融資産は、発行体が上場廃止となったり、倒産したりすれば価値がなくなる。現金も国勢が悪化すればその価値は下落する。金融資産は、実態の裏付けがない分だけ、土地、不動産、貴金属などの実物資産と比べてリスクが高いと言われる。
歴史的に見て、実物資産の中で最もその価値が安定していて安全だとされるのは、金(ゴールド)であろう。文明の連続性が遮断されるなど、人類の価値観が大きく変わるようなことが起こらない限り、その価値は今後も続くと考えられる。
今、その金価格が急騰している。円ベースでも、ドルベースでも、過去最高値更新ペースで上昇している。
8月4日の金(ゴールド)の税込み買取価格(田中貴金属、以下同様)は1グラム当たり7364円である。足元では7月後半から上昇が目立っているが、7月17日の税込み小売価格は6883円であり、2週間ちょっとで7%上昇している。これは金価格の短期変動幅(率)としては非常に大きい。
統計が異なるが、田中貴金属が発表している税抜参考小売価格(月平均)で比べると、2019年5月が1グラム当たり4582円であるのに対して、2020年7月には6341円まで上昇している。この1年強の間、金価格は4割弱上がっており、強い上昇トレンドが出ている。
一般論だが、金価格は、世界情勢の変化に影響を受けやすい。そう考えると、この急騰は気味が悪い面もある。投資家は世界情勢の悪化、金融危機への恐怖などを感じ取っているのだろうか。
金とよく対比されるのはドル建て金融資産であり、その価値を示す一つの指標としてドル為替レートがある。ドルの実効レートを示す米ドル指数先物の動きをみると、3月23日に高値103.96を付けてから下落、直近では7月に入り急落しており、31日には92.51まで下げている。水準自体はそれほど低いわけではない。2008年には70を割る寸前まで下落しており、その当時と比べれば、まだ高い。とはいえ、足元での急激な下落は気になるところである。