住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は「西新宿」(東京都新宿区)について、ライターの金子則男氏が解説する。
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東京には、多数の鉄道会社と鉄道路線が乗り入れるターミナル駅がいくつもありますが、その中でも頂点に立つのが新宿。1日の乗降客数は350万人を超え、世界最多としてギネス認定されています。そこからわずか1駅の西新宿は、高層ビルが立ち並び、オフィス街というイメージが圧倒的に強い街ですが、住む街として選択肢に入るのでしょうか。
鉄道は東京メトロ丸ノ内線のみ。かつては新宿の次は中野坂上でしたが、両駅間が長いため、1996年に新たに設置されました。東京メトロの中では比較的新しい駅ですが、乗降客数は1日あたり9万人以上(2019年)に上っており、今や中野坂上よりも上。新宿まではわずか2分です。
道路状況は基本的には良好です。もともとこのあたりは淀橋浄水場があり、都民の水がめだった場所。そこが超高層ビル街へと変貌した経緯から、車道は広く、歩車分離も完備していて、車も歩行者も快適です。首都高の出入り口、さらに青梅街道、甲州街道、山手通りなどの幹線道路に近いので、車移動の方にも向いています。ただし、青梅街道より北側、十二社通りより西側の裏道はかなりゴチャゴチャしていて道も狭いので、運転には十分注意が必要です。
東西自由通路の完成で徒歩移動がもっと便利に
西新宿の最大の魅力は“新宿から近いこと”ですが、それをさらにパワーアップさせてくれたのが、7月に完成したばかりの新宿駅の東西自由通路です。これまでは巨大な駅が街を分断し、駅の東側と西側を行き来するのが非常に億劫でしたが、自由通路の完成により、新宿の街全体の回遊性が飛躍的に高まりました。“新宿ダンジョン”と呼ばれるほど新宿駅周辺の地下道は充実しており、西新宿駅から遥か遠くの新宿三丁目(電車で2駅分)まで、雨風を避けながら延々と地下を歩いていくこともできます。