コロナ禍で「理想の街」は激変した――多くの不動産業界関係者の実感を裏付けるデータが発表された。ライフルホームズが9月8日に発表した「コロナ禍での借りて住みたい街ランキング(首都圏版)」だ。
同調査では、これまで通常ランキングで4年連続で1位だった「池袋」が5位に後退し、上位常連組の「三軒茶屋」が11位、「川崎」が12位にまで後退した。代わってトップに輝いたのは、神奈川の「本厚木」、2位は東京東部の「葛西」だった。
一方、著しく人気を落とした街もあった。ライフルホームズの「コロナ禍での問合せ増加率ランキング」調査で問い合わせ率が減少した街は、ワースト1位の秋葉原(43.9%に減少)を筆頭に、笹塚、飯田橋、高田馬場、新宿、浅草橋など都心エリアに集中した。
また、人気が急落した顕著な都市が神奈川・武蔵小杉だ。近年、住みたい街ランキング上位の常連に定着していた“セレブの街”だが、リクルート社が実施した2020年の最新版「住みたい街ランキング」では、前年の9位から20位に順位を落とした。
ターニングポイントとなったのが、昨年10月の台風19号による浸水被害だった。
「憧れの街のタワマンが浸水に弱かったと分かり、需要が極端に落ちました。8月末に久しぶりに取引が成立しましたが、売買が成立した物件は、現在売りに出ている物件よりも坪単価で1割ほど値が低かったことが分かっています」
そう明かすのは、不動産ジャーナリストの榊淳司氏だ。
台風19号による多摩川の氾濫で、駅前の47階建てタワマンは浸水し、地下に設置された配電設備に水が流れ込んだ。その結果、停電と断水が発生。水洗トイレは流せなくなり、エレベーターは1週間以上もストップした。
水害直後に本誌・週刊ポストがタワマン住民を取材すると、「停電中は30階まで階段で上り下りした」「トイレが使えない間は、ビニール袋に用を足し、脱臭剤を入れて捨てていた」などの声が聞かれた。