親にとっては金銭的に都合がよい、きょうだい間の「お下がり」。服や文具、制服など様々なものが対象になるが、当事者だった子どもは大人になった今、どう感じているのだろうか。きょうだいの下の子にとって避けては通れない「お下がり問題」のリアルとは。
30代の女性会社員・Aさんは、5歳年上の姉がおり、「いつも姉のお下がりばかりで嫌だった」と打ち明ける。
「姉だけいつも新品買ってもらえるのが羨ましくて……。中でも服が本当に嫌でした。私が着る服はほとんどお下がりで、中学生くらいまで続いたのですが、高校生になって自分でバイトして新品を買ったときの喜びは今でも忘れられません。一人暮らしを始めたときも『自分用』のものを揃えられる喜びがありました。そもそも、姉妹といっても趣味嗜好は違うわけですから、押し付けられるのが苦痛で仕方がありませんでした」(Aさん)
そんなAさんは、服以外でも不快に思っていたことも多かった。裁縫箱や彫刻刀、習字道具、リコーダーなどなど。
「学校でカタログが配られて、皆が『どれにするー?』みたいに、胸を躍らせながら相談している光景がまぶしかったものです。それに自分だけデザインが少し古いという惨めさ。『自分用』がほしいという思いが強まる瞬間でもありました」(Aさん)
ハレの日の衣装も、もちろんお下がりだ。
「習い事のピアノの晴れ舞台である発表会の衣装も、姉のお下がり。たぶん七五三もそうだったはずで、姉妹の妹に選択権はありません。ただ、おかげで早い段階で、自分で稼いで好きなものを買いたい、という自立心は芽生えたように思います」(Aさん)