スマホの普及により気軽にどこでも写真が撮れるようになったものの、撮影マナーやプライバシーの侵害など気を付けるべき点は多く、無断撮影がトラブルを招くこともある。ここでは建造物の外観の撮影に関して法的にはどうなっているのか、弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答するかたちで解説する。
【相談】
若き女性読者です(笑い)。先日、Go Toで原宿に遊びに行きました。そこで可愛らしいお店を発見。記念に写真を撮ろうとすると、お店の人から「写真はダメ!」と注意されました。人間なら肖像権があるので理解できますけど、建造物にも肖像権があるのでしょうか。それでも無視して撮ると、罰せられますか。
【回答】
建造物に肖像権がないことは、その通りです。肖像権は元々、法的に保護されるべき人格権、もしくは人格上の利益の一つであり、建造物が肖像権を持つことはありえません。また、建物所有者が建物に関し、人格的利益を持つことも、通常考えられません。とはいえ、建物の外観等が法律で保護される場合はあります。
例えば、店舗の外観が極めて特徴的で、長年親しまれ、この外観の店なら「何々屋」だと思われるほどになっていれば、経営主体を特定する営業表示として不正競争防止法で保護され、その経営主体と誤認させるような似通った外観の店で営業することはできません。
他にも、立体的形状の商標として登録された店舗の外観は商標法によって保護され、商標権者の許可なく類似の外観の店舗で同種営業を行なうことはできません。ただ、当該店がこうした法律で保護されていると仮定しても、それは他の業者の不正競争や商標冒用が禁止される場合であって、消費者の写真撮影行為が禁止されるわけではありません。