コロナ禍の影響で副業を始める人が急増しているが、中でも地方在住者に増えているという。115万人が登録している副業マッチングサービスを手掛けるランサーズによると、仕事の発注者の約60%は東京に拠点を置く企業や東京在住者である一方、受注者の75%は地方在住者なのだという。同社取締役の曽根秀晶氏が解説する。
「コロナ禍で仕事のオンライン化が一気に進んだことは地方在住者にとって大きなチャンスです。かつては直接会って打ち合わせしてから仕事みたいな日本的文化が副業でも見られましたが、今はオンライン上での顔合わせすら求められない時代になっている。良い意味で純粋にスキルのみが評価されています」(曽根氏)
コロナ不況は観光業や飲食業の割合が高い地方ほど深刻な現状が報じられている。ところが業務のオンライン化や在宅勤務が進んだことで、仕事の受発注を巡る環境に大きな変化が生じたのだという。
「従来の日本的なメンバーシップ型雇用が、急速にジョブ型へと転換しているようです。企業側からすれば、今まで社内にいる誰かに面と向かって漠然と仕事を振っていたわけですが、在宅者へのリモート発注になり、より明確な指示が必要になった。しかし、これが回り出した時、“別に社内の人じゃなくても頼めるよね。社外の方が低コストかもね”となり始めた。企業側がジョブ型へと舵を切り始めたからこそ、副業市場が活況を呈しているのだと思います」(曽根氏)
日本で主流のメンバーシップ型雇用が人に対して仕事を割り振るのに対し、ジョブ型雇用は仕事に対して人を割り振る。日本企業の生産性の低さはメンバーシップ型雇用に原因があると指摘する声も少なくない。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の著者で、企業の内部事情などに詳しい公認会計士の山田真哉氏もこう分析する。
「不況に喘ぐ企業がコスト削減しなければならない時、削りやすい変動費だけでなく、金額の大きい人件費などの固定費を見直したいと考えるのは当然です。従来は雇用慣行が幅を利かせ、簡単には手を付けられなかったのですが、リモートや在宅勤務が労働者にとって当たり前に受け入れつつある昨今、そこに踏み込みやすくなった。社内の『ジョブ』をコストの安い社外へという動きはますます広がるのではないか」(山田氏)