相続争いなんて、莫大な財産を持つお金持ちだけの話と思っているなら、それは間違いだ。相続争いの約半数は「遺産5000万円以下の家庭」で起こっており、その件数は右肩上がりに増えている。2020年4月、40年ぶりに大きく改正された相続法を今しっかり知っておかないと、あなたの家庭が恐ろしい“争続”の現場になるかもしれない──。
相続トラブルを避けるためには、遺言書をつくっておくのがベストだ。遺言書には、公証役場でつくる「公正証書遺言」と、自分で書く「自筆証書遺言」がある。厚労省の発表によると、2018年につくられた公正証書遺言は約11万件で、家庭裁判所が確認した自筆証書遺言は約1万7000件。これに対し、同年の死亡者は約136万人のため、亡くなった人のうち遺言書を作成しているのはわずか1割ほどだった。
しかし、これも2020年4月から施行された新制度により、遺言書はこれまでよりずっと、つくるのが簡単になったのだ。すべて手書きする必要があった財産目録はワードやエクセルで作成できるようになり、預金通帳や保険証券のコピーなどの添付も認められるようになっている。『プロが教える 相続でモメないための本』(アスコム)の著者で相続終活専門協会代表理事の江幡吉昭さんが話す。
「自筆の遺言書は法務局でチェックして保管してもらえるうえ、手数料も3900円と安い。非常に手軽になったことから、遺言書をつくる人が増えてきています」(江幡さん・以下同)
一方、以前より手軽になったことで、新たな問題も懸念される。法務局には遺言書を作成した本人が行かなければならないが、車いす状態になった親に息子や娘が遺言書をつくらせて、無理矢理法務局に連れて行くことすら可能になってしまうのだ。
「法務局でのチェックは、日付が正しいか、押印がされているか、といった形式の確認のみ。遺言書の内容の正当性までは確認してもらうことはできないので、本意でない遺言書をつくられないよう、元気なうちに書いておく必要があります」
最も安心なのは、公正証書遺言をつくること。1万1000円の基本手数料がかかるが、それでも公証人の立ち合いのもと、遺言者の意思に基づいているかどうかも確かめながらつくることができる。自筆証書遺言と違って原本を公証役場で保管してくれたり、検認の必要がなかったりと、安全性は高い。
※女性セブン2021年1月14日号