今年4月にスタートする「70歳就業法」(改正高年齢者雇用安定法)などにより“定年消滅時代”がやってくるが、今後は年金のルールも大きく変わる。年金博士こと社会保険労務士の北村庄吾氏が指摘する。
「新しいルールを踏まえて『何歳までどのような形態で働くか(どう年金に加入するか)』『何歳から年金を受給するか』の組み合わせを考えることが重要になります」
年金制度の変更内容と年代別の年金受給の選択肢を踏まえて、働き方ごとに“得する年金術”をみていく。
「60歳で転職」でも、繰り上げ受給の選択は慎重に
定年消滅時代は60歳からの転職(再就職)も、より一般的になる。転職時に次の働き先が見つからず、職に就かない空白期間が生じることも増えると考えられる。
その際に収入を確保するためには、年金の繰り上げ受給も選択肢のひとつだ。2022年4月以降は、繰り上げ受給の「減額率が緩和」される。
現行制度では、「60歳繰り上げ」を選ぶと受給額は30%減る。年金月額約16万円の人は月額約11万円になるが、今後は24%減に緩和。月額は約12万円と「月1万円」増え、繰り上げ受給のデメリットが少なくなる。
ただし、前出の北村氏は「繰り上げの選択は慎重に」と注意を促す。
「60歳で退職した後であれば、多くの場合、繰り上げ受給より失業給付のほうが額は大きい。たとえば月給40万円だった人であれば、失業給付は月額約19万円を最大5か月(150日間)受け取れます。
失業給付と年金(特別支給の厚生年金)は同時に受給できないので、まずは失業給付を受け取り、受給期間が過ぎても就職先が決まらなければ、年金の繰り上げ受給を検討するとよいでしょう。
繰り上げ受給をスタートしてから再就職が決まり、毎月の年金が不要になっても受給はストップできません。減らされた額の受給が生涯続くことになります」
※週刊ポスト2021年2月19日号