巨大不動産を保有して事業を展開する大手企業は多数あるが、都心の一等地ではコロナの影響で地価下落の兆候がある。安定収益をもたらし、ステータスにもなっていた「不動産」と企業の関係はどう変わっていくのか。
多くの不動産を持っている会社と言えば、不動産会社を思い浮かべる人も多いかもしれないが、「本業」とは別に、不動産ビジネスを幅広く手がける企業は少なくない。その代表例が鉄道会社だ。不動産ジャーナリストの榊淳司氏が指摘する。
「沿線主要駅の周辺を開発してオフィスビルや大型ショッピングモールなどをつくり、それを賃貸することで収益をあげてきた。近年は、近畿日本鉄道や阪急阪神HD、西日本鉄道など地方企業も東京に進出し、不動産開発を積極的に行なってきました」
鉄道会社は移動の減少で旅客輸送事業が苦境にあるが、商業施設や不動産事業でも向かい風が吹くことになる。たとえばJR東日本の2021年3月期決算の業績予想は4500億円の赤字に下方修正されたが、運輸事業だけでなく、不動産・ホテル事業も減収が見込まれる。
映画配給会社などでも、近年は不動産事業の存在感が増していた。
「昔からエンタメ企業は、全国の主要な繁華街に劇場や映画館などを持っていましたが、近年はその土地を活用してオフィスビルや商業施設に建て替え、賃貸料を稼ぐビジネスモデルに傾斜してきた。
ホテルグレイスリー新宿がテナントとして入る『新宿東宝ビル』、幅広い業種の企業のオフィスが入る松竹の『歌舞伎座タワー』などが代表例です。経営を下支えしてきたが、コロナで大きな曲がり角に差し掛かります」(榊氏)
新聞・テレビ局などメディア系企業も同様だ。
「もともとメディアは朝日新聞なら有楽町、TBSなら赤坂と、都心の一等地に本社があった。TBSが赤坂Bizタワーを建てたように、各社は“地の利”を生かして利益を得てきた」(榊氏)