一戸建てをリフォームして住み続けるか、都会のマンションへ引っ越すか、はたまた施設に入居するか──意見が分かれる“終の棲家”問題だが、今後、数十年の間に必ず起こるといわれている震災への対策を無視してはいけない。武蔵野学院大学特任教授の島村英紀さんがアドバイスする。
「東京の下町や中央線沿線の一部の地域のように、木造建築が多く住宅が密集している地域は火災が広がりやすく、高齢になるほど逃げ遅れるリスクが高くなります。古くから住んでいて近隣住民との連携が取れるなら話は別ですが、昔ながらの街は、住みやすそうに見えても住まない方がいい」
かといって、「新しくできた街」も場所によっては危険は大きい。東日本大震災では、埋め立て地である千葉・浦安が液状化現象で大被害を受けた。さらに、高齢になるほど、高層マンション住まいはリスクが伴う。
「高層マンションは、停電でエレベーターが止まったら、階段で上り下りしなくてはならない。そもそも、高層の建物は地震の揺れが大きいのも問題です。耐震構造上、上の階ほど揺れて地震のダメージを抑える構造になっていますが、震度6強以上の強い揺れだと、固定していない家具が倒れる可能性が高い」(島村さん)
老後に向けて、自宅を改装する場合も焦りは禁物。自治体のバリアフリー助成金制度の中には、要介護認定を受けていなくても対象となるリフォームがあるが、急いでバリアフリーにすると失敗しやすい。一級建築士で高齢者住環境研究所社長の溝口恵二郎さんがアドバイスする。
「まだ元気なうちに手すりなどを廊下につけてしまうと、いざというとき高さなどが合わず、使いものにならないことがあります。実際に必要な段階になってから工事をした方が賢明です」