外資系カフェチェーン、コンビニコーヒーなど選択肢が広がったことにより、日本のコーヒー消費量は拡大の一途だ。競争相手が増える中、老舗のキーコーヒーの柴田裕社長(57)に勝ち残り策を、ジャーナリストの河野圭祐氏が訊いた。
──このシリーズではまず、平成元年(1989年)当時について伺っています。
柴田:私が大学を卒業してキーコーヒーに入ったのは、1987年でした。当時、社長だった父から「株式上場を目指すので手伝ってくれ」と言われて入社を決めました。
2年ほど営業や調達部門で働き、入社3年目に半年ほどブラジルへ海外研修に行きました。平成を迎えたのはちょうどその頃でした。
──ブラジルではどんな仕事を?
柴田:コーヒー豆の生産量は、当時から現在までブラジルが世界の約30%を占めています。サントスという港町が輸出基地で、コーヒー豆の品質管理や輸出のイロハをとことん学びました。コーヒー農園に出向いて栽培状況を確認したり、生産者の方々とコミュニケーションを取る日々は大変勉強になりました。
1989年は会社にとっても大きな転機で、社名を「木村コーヒー店」から「キーコーヒー」に変更しました。東証一部上場が実現したのは1997年ですね。
「トアルコ トラジャ」は魂
──コーヒー市場が拡大中の一方で、最近ではスターバックスやタリーズなどシアトル系カフェ、さらにはコンビニコーヒーなど選択肢が増えている。ライバルが増えたことは脅威では?
柴田:コーヒー文化の拡大は歓迎すべきことです。
市場が伸びているとはいえ、日本人1人あたりのコーヒー摂取量は欧米諸国に比べるとまだまだ少ない。平均すると1人あたり1日1杯くらいですが、北ヨーロッパの国ではその3倍から4倍飲まれているんです。
もちろん日本にもコーヒーを1日何杯も楽しまれる方はおられますが、一方で「まったく飲まない」という人も多い。コーヒーの魅力をもっと伝えていけば、まだまだ伸びると思っています。