4月から「70歳就業法(改正高年齢者雇用安定法)」が施行され、いよいよサラリーマンの人生から「定年」という概念が消滅する時代がやってくる。
60代のうちはもちろん、70歳以降も働き続ける──それは一体、どんな人生になるのか。改正法施行に先立って、70歳以上の雇用を進めている企業の“生涯現役社員”に、話を聞いた。
「65歳以上の再雇用が今年から制度化されて、私が第1号の社員です」
家電量販大手のノジマで、店舗の販売管理システム、会計システムなどを運営するITシステム部でフルタイムで働く丸本明寿さん(65)が言う。
もともとノジマでは、店舗で販売員として働く70歳以上のベテランスタッフは少なくなかったが、今年から改めて再雇用制度を見直した。65歳で定年を迎えた全社員が、希望すれば80歳まで1年ごとの契約更新で働けることになった。
丸本さんは別の会社に在籍していた時に、ノジマのオンラインシステム運営に携わり、その縁で1997年、同社に中途入社した。長年にわたりシステムを見てきた強みが、現職にも活かされている。
「システム運営はチームでの成果が問われます。若いスタッフを育成しながら経験を共有できる人間になれば、年齢に関係なく活躍できます」
職場を見学すると、若手社員からの相談に答える丸本さんの姿があった。20代の若手社員は、「初期の頃からノジマのシステムを知り尽くし、頼りになるお父さんのようです(笑い)」と話す。
丸本さんは長く働くコツについて、「仕事に没頭し過ぎないことが大切だと思います。時々立ち止まって、自分の働き方を振り返るくらいがちょうどいい」と言う。残業を厭わず仕事に没頭した50代までと意識的に働き方を変え、当面は70歳まで働くことが目標だ。
※週刊ポスト2021年4月16・23日号