「田舎暮らしは甘くない」──。ピシャリとそう言い切った動画が話題を呼んでいる。東京から来た移住者と地元住民の関係性を描いたユニークな内容だ。制作した高知県高知市役所の地域活性推進課・森田加奈子さんに話を聞いた。
「高知では2018年度に『こうち二段階移住制度』をスタートさせました。こんなはずじゃなかったという移住ミスマッチを軽減させるため、(比較的都会に近い)高知市内から(自然豊かな)県内へと段階的に移住をしてもらう移住の方法を提案しています」
動画はそのプロモーションの一環として作られた。
「移住のポジティブな面だけを押し出すのではなく、あえて問題提起型のストーリーにしました」(森田さん)
移住にあたっては仕事・収入面で苦労する人は少なくない。認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが行った、希望する就労形態についてのアンケート調査によると、「企業等での勤務」を希望する人が圧倒的に多く、「農業」「自営業」がそれに続く。目新しい動きとして、新型コロナウイルスの影響によって注目を集めた「テレワーク」が新たに加わった。
では実際、地方移住した人たちは仕事面でどのような苦労を感じているのだろうか。彼ら/彼女らの実体験と胸の内を聞いた。
沖縄・51才・女性のケース
東京の外資系医療機器メーカーでガムシャラに働いてきた私。40代半ばになって念願だった年収700万円も達成できた。50代になる前に、残業や休日返上でがんばってきた自分自身の未来を見つめ直したい。そんな思いから、大好きな沖縄に移住することを決意。気に入った住まいも手に入れた。あとはこれまでのキャリアを生かせる職場探しを……と思ったけど、仕事がまったくない。
ようやく見つけた仕事は通販会社のオペレーターで、時給600円。東京時代とは打って変わって質素な生活を送っています。同僚には、有給休暇の存在自体を知らないまま5年間もこの時給で働いていた人がいて、ぶったまげました。