親が存命中に対策しないと大きなトラブルになりかねないのが、「自宅の処分」だ。ひとり暮らしの父の死後、北関東にある実家を相続した都内在住60代男性が語る。
「『誰も住まないなら売るべき』と主張する弟を、『先祖代々の土地だから売らずに守りたい。家は直して人に貸す』と説得し、150万円かけて実家の平屋をリフォームしました。賃貸の仲介のみ不動産屋に任せ、“自主管理”で貸家を始めたのですが……」
築年数が古く立地も悪かったせいか、1年経っても借り手はつかない。そして事件が起きた。
「実家は遠いので、最初は毎週行なっていた庭の草むしりもサボりがちに。空き家同然に放置したことで、いつの間にかホームレスに侵入され、家の中で変死されてしまったのです」(同前)
その後も借り手はつかないまま、事故物件サイトに情報が出回る始末。家は売るに売れなくなった。いずれ更地にするにしろ、お金が出る一方の状況に、男性は「考えが甘かった」と悔やむ。
相続に詳しい税理士の橘慶太氏は、親の死後に実家が空き家となるリスクをこう指摘する。
「空き家を所有すれば、固定資産税や火災保険料などで年間数十万円かかることがあります。空き家を補修せず放置すれば、自治体に“倒壊等の恐れあり”と判断され『特定空き家』に指定されることもある。そうなれば、土地にかかる固定資産税は住宅用地としての特例措置が外され、税額が最大6倍まで跳ね上がります。さらに解体費用として100万円単位が請求される可能性もあります」
相続した実家を処分できないケースもある。首都圏在住の50代男性が明かす。
「すでに独立して家があるので、父から相続した実家は売却を決めていました。ところが不動産の登記簿謄本を取ると、実家の土地は父とAという人の共有だったことが分かった。登記の日付は30年以上前で、その事情や経緯は父から聞いたこともありません。登記から辿ってもA氏の所在は不明で、誰も住まない実家を売却できずにいます。なぜ、父は何も説明してくれなかったのか……」