骨になってまで子に迷惑はかけたくないが、現実は厳しい。親が亡くなった後、子が直面することの多い難題が「墓じまい」だ。地方に住む両親がともに亡くなり、子供たちが都会で暮らしている場合、墓の改葬が選択肢となるが、十分な備えがないとトラブルにつながる。
都内在住の65歳会社役員は、「母が生きているうちに相談しておけばよかった」と後悔している。
「ひとり暮らしだった母が亡くなり、田舎の墓を都内に移そうと思ったのですが、菩提寺に相談したところ“ご先祖様を供養してきたのにとんでもない”と怒られた。それでも移したいと相談したら、離檀料が100万円だという。私が菩提寺の住職とほとんど付き合いがなかったことも気に入らないようで、生前の母から話を持っていってもらったほうがよかったのかもしれない」
檀家がどんどん減少するなかで、「寺院の側もなんとか思いとどまらせようと必死」(関西の寺院の住職)という事情もある。
墓じまいができたとしても、「田舎の親戚に改葬するという連絡が行き渡っておらず、半年ほどしてから“本家の墓を勝手に移すな!”と亡くなった母のいとこから猛烈に叱責された」(都内在住68歳男性)といったエピソードは多い。
葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏はこう説明する。
「お墓については、子供たちがどのように守っていきたいか、守っていけるのかを考えて、親子で話し合いをしておくとよいでしょう。父親が亡くなった時に郷里にお墓を建てたけど、母親が要介護になって“なかなか墓参りができないから子供たちが守りやすい場所に引っ越してほしい”と言い出して、子供たちが翻弄されるというケースもありました。先祖供養など弔い方に対する考えを親世代と子世代で日頃から共有する機会があると、自然と話がまとまっていく傾向にあると思います」
人生の最後だからこそ、最後の務めを果たして旅立ちたい。
※週刊ポスト2021年5月7・14日号