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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

日本に“なんちゃってデジタル庁”を創設しても世界との差は埋まらない

“鎖国”を続けるアナログ国家・日本(イラスト/井川泰年)

“鎖国”を続けるアナログ国家・日本(イラスト/井川泰年)

 社会が大きく変革を遂げる中で注目を集めているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)だ。実際に、日本でも多くの企業にDXの波が押し寄せているが、政府や自治体はそこから取り残されているようにも見える。経営コンサルタントの大前研一氏が、世界の中で日本が置かれている現状について解説する。

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 デジタル庁創設を柱とする「デジタル改革関連法案」が衆議院を通過し、5月にも成立する見通しとなった(本稿執筆時点)。しかし、日本の政府や地方自治体の現実は全くデジタルではない。

 たとえば、住民票などの発行手数料や公共施設の使用料は、地方自治法の定めにより、いまだに原則現金だ。ようやく総務省が電子マネーなどキャッシュレス決済の利用を制度上明確にするための議論を開始するというが、改正案の国会提出や施行の目標は早くても2023年だそうだから、開いた口がふさがらない。

 また、政府内で法案の表記ミスなどが相次いだ問題では、各省庁が使っているワープロソフト「一太郎」の「ワード」との互換性が要因とされているが、すでに民間では“過去の遺物”となった「一太郎」をまだ使っているのは驚きだ(ただし、表記ミスの最大の原因は、官僚の“劣化”だろう)。

 世界の主要国から大きく後れを取っている新型コロナウイルスのワクチン接種にしても、対象者は市区町村から郵送された「接種券」と本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、健康保険証など)を持って予約した医療機関や接種会場に行くという相変わらずのアナログなやり方だ。

いずれ“黒船”はやってくる

 ビジネスにおけるDXの本質は、デジタルテクノロジーを活用して21世紀型企業へと変革を図ることにある。そして、これからのDXのキーデバイスはスマートフォンだ。スマホのOS(基本動作を司るシステム)は「iOS」と「アンドロイド」の二つしかないが、実はこれはすごいことである。なぜなら、どこの国でも基本システムが同じということは、日本で可能になったことは世界で可能になり、世界で起きたことは日本でも起きるからだ。

 実際、今や日本の競争相手は欧米や中国、韓国だけではない。かつて「日本に追いつき追い越せ」を合い言葉にしていた東南アジアでもDXの波が押し寄せ、日本にはほとんどないデカコーンやユニコーン(※株式評価額が100億ドル以上の未上場ベンチャー企業がデカコーン。同10億ドル以上がユニコーン)が次々に出現している。

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