投資情報会社・フィスコが、株式市場の5月17日~5月21日の動きを振り返りつつ、5月24日~5月28日の相場見通しを解説する。
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先週の日経平均は28000円を挟んだ一進一退が続いたが、週間では反発となった。週初は、前の週末に、米4月小売売上高が市場予想を下回ったことで「インフレ懸念一服・長期金利低下」の動きが続き、米ハイテク株を中心に大きく上昇したことを背景に200円超上昇してスタート。ただ、新型コロナウイルス感染封じ込めに成功していた台湾やシンガポールなどの東南アジアでも感染が再拡大していることで、海外投資家を中心に、アジア株売りの動きが強まったようで、寄り付き直後から失速すると、28000円を割れて終えた。
翌18日は下げ一巡感から、短期筋を中心とした売り方の買い戻しを主体に想定外の大幅反発となり、一時は28500円近くまで上げた。19日は、予想を下回った米4月住宅着工件数や、イエレン財務長官による法人税引き上げへの言及を背景とした米株安の流れが波及。再び28000円を割り込むなど、大きく下げて始まった。ただ、28000円割れの水準では値ごろ感からの押し目買いも入り、一時は28200円台にまで値を戻すなど、振れ幅の激しい展開となった。
20日は、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン価格の急落を警戒してNYダウが一時600ドル近く下落したことや、4月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録において判明した、将来的な量的緩和縮小の討議可能性などを背景に、日経平均は再び28000円割れでスタート。ただ、依然として28000円割れでは押し目買いが強く、この日も即座に切り返して同水準を回復する展開となった。
週末21日は、仮想通貨相場に落ち着きが見られたほか、上昇傾向が警戒されていた米10年物ブレークイーブンインフレ率および米長期金利が低下したことで、値がさグロース株を中心に買われた。また、「米ファイザー社製に続き、米モデルナのワクチンも正式承認する見通し」との政府方針のほか、午後には「米モデルナがワクチンの国内生産を検討」と伝わったことも、支援要因になった。この日の日経平均は膠着感を強めながらも、底堅さを示す動きとなった。
今週の日経平均はもみ合いながらも堅調な展開か。前週に相場急落の要因となったインフレ懸念は小休止し、米長期金利の再上昇も一服してきた。もともと、インフレ懸念は商品市況において先行して進んでいたわけだが、中国が鉄鉱石・鉄鋼価格の上昇抑制に向けた措置を発表したことや、これまでの急伸の反動もあり、商品市況での価格上昇は一服してきた。
米石油パイプラインへのサイバー攻撃などで原油価格も急騰していたが、こちらも一服してきている。当該石油パイプラインの操業は既に再開されているほか、先週発表された米エネルギー情報局(EIA)の週間統計では、需給の逼迫感が緩和されてきた。また、イラン核合意の再建で当事国が妥結する可能性が浮上。合意再建となってイランへの制裁が解除されれば、同国からの原油輸出が再開され、一層の受給緩和に繋がる。
一方で、先週に市場でやや驚きをもって捉えられた、4月開催分のFOMC議事録を今一度振り返りたい。同議事録では、一部の政策担当者が量的緩和縮小に向けた将来的な討議を視野に入れていることが分かった。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長をはじめ、高官の多くは、量的緩和縮小について「時期尚早」と繰り返し強調していただけに、ややサプライズ感があった。ただ、市場はかねてから早期の金融引き締めを折り込みにいっていたことから、直後の米長期金利の上昇は限定的だった。