プロ野球・中日ドラゴンズの二軍コーチだった門倉健さん(47才)の突然の失踪が、大きな注目を集めている。もし家計を支える夫が行方知れずになった場合、残された家族はどうなるのか。実際にそうなった場合、突然死によっていなくなるよりも、はるかに面倒な事態が家族を待ち受けているという。
過去に何度も映画やドラマになっている松本清張の傑作長編小説『ゼロの焦点』では、主人公・禎子の夫が北陸の金沢で失踪するところから物語が始まる。禎子は夫の行方を捜し回り、夫の隠された過去を知ることになるのだが、現実では、夫に蒸発された妻にそれだけの“余裕”があるのは珍しいケースだろう。
突然、夫が失踪したらどうなるか。専業主婦ならば、まずはその日からの生活が心配だ。生活費は充分か、家賃や住宅ローンは払えるか、子供の学費はどうなのか。夫の名義になっている水道や電気、携帯電話の契約はどうすればいいのか──問題は山積だ。
家族の失踪は他人事ではない。警察庁によると、行方不明者は令和元年度で約9万人。そのうち、家庭や仕事、借金や異性関係が理由で、故意に失踪した人の割合はかなり大きいという。
ちなみに、警察に捜索願を出しても、門倉さんのように自らの意思で失踪している人を本気で捜してはくれないので、期待するだけムダだ。
とにかく、まずは当面の生活費。夫のキャッシュカードさえあればなんとかなる、と思うのは早計。相続や遺言など、家族問題で相談実績のある司法書士法人ABC代表の椎葉基史さんが解説する。
「失踪したとはいえ、亡くなったわけではありません。夫婦であっても、勝手に本人名義の口座からお金を引き出すことはできないんです。また、光熱費や携帯電話、家賃の名義変更もできません。後からもし本人がひょっこり出てきたら、“詐取された”と訴えられかねません」