人生の最期をどこで迎えるか──。死に直面した時、誰もが考える最大のテーマだろう。住み慣れた自宅や施設への入居など、よき「死に際」を迎えるための選択肢はいくつかあるが、肝心なのが「看取り」の瞬間だ。準備が足りないと、希望どおりの最期を迎えるのは難しい。介護評論家の佐藤恒伯さんが指摘する。
「自宅での看取りを希望する場合、在宅医と契約するのが一般的です。ただしコロナ禍により通院を控えて訪問診療に切り替える高齢者が増えているので、まずは訪問診療をやってくれるかかりつけ医を確保する必要があります。
また、自宅での看取りを希望する人の容体が急変した際、家族が救急車を呼ぶとそのまま病院に搬送されて、延命治療を施されてから病院で亡くなるケースが多い。容体が急変したら救急車ではなく、かかりつけの在宅医に連絡して指示を仰ぐことが重要です」
終の住処にするつもりで入居した老人施設なのに、看取ってもらえないケースもある。
「看取りを行わず、容体が悪化したら病院に搬送する老人施設は多い。『いったん入ったら最期まで看取ってもらえる』という過信は禁物です。また『一般的な看取りは行うけれど、専門医の診断が必要となる合併症がある場合は不可』という老人施設は、糖尿病などの持病があったら看取ってくれません。最期が近くなってから、『うちでは看取れないので出ていってください』となりかねない。しっかり事前に確認することが必須です」(佐藤さん)
最近は胃ろうや人工呼吸器などの延命治療を拒み、なるべく自然に死を迎える「尊厳死」を望む人も増えている。ただし尊厳死を迎えるには、事前に家族と細かい部分まで共有しておく必要がある。看護師・ファイナンシャルプランナーの藤澤一馬さんが話す。
「あいまいな形でしか意思を伝えていないと、いざというときに家族や医師の判断で延命処置を施されることがある。また、公正証書の『尊厳死宣言書』というものもありますが、記すことは『苦痛を取り除く行為は受ける』『医師に非はありません』といった、抽象的で意思が伝わりにくい内容です。
『胃ろうは絶対に嫌』『意識もないのに、ただ息をするだけの管はいらない』など、具体的な意見を文書に記しておき、署名と押印をして家族に預ける方が効果的です。コロナ禍のいまは病院へ行くのを控える人も増え、医療者側に意思を伝える機会が減っているので、家族のキーパーソンとしっかり話しておくべきです」
※女性セブン2021年6月17日号