新型コロナウイルスのワクチン接種が進むとともに、お盆や年末年始の帰省も増えていくのではないだろうか。「抗体獲得後」に、久しぶりに親子が顔を合わせた際、話し合っておきたいことは数多くある。どうやって話を切り出し、何を決めればいいのか。
相続や葬儀、終末期医療などは、家族同士でも話題にするのが憚られることもあるデリケートな問題だ。気軽に“リモートで話そう”というわけにはいかない。だからこそ、新型コロナの影響は大きかった。妻に先立たれ、ひとり暮らしの73歳男性がこう話す。
「父が亡くなった時は、実家のどこに通帳や現金、重要書類があるかを整理している最中だったので、全財産をきちんと継げたのか判然としなかった。その反省から、息子と娘には面倒をかけないようにと、細かい財産目録を作って3か月に1回更新しています。誰に何を相続させるかも整理して、子供たちが帰省した時に最新のリストを見せていた。ただ、この1年ほどはコロナで子供たちも帰省しないので、その機会がなくなってしまった」
この男性のようにコロナ前から準備を進めていたのであれば影響は少ないが、“これから話し合おう”と思っていた家族には、コロナ禍が大きな問題となった。
ワクチン接種が進めば、ようやく「家族会議」で顔を合わせて話せるようになる。
会議の参加者はしぼる
相続問題に詳しい公認会計士・税理士の五十嵐明彦氏はこう言う。
「いたずらに焦っても仕方ありませんが、家族会議をやろうと思っているうちに親御さんの認知症が進行してしまったケースもあるので、早い段階で話し合う場が設けられるとよいでしょう。ポイントのひとつとしては、参加者をしぼることです。息子や娘など、法定相続人に限定し、それぞれの配偶者を入れないほうがスムーズに進みやすい」
関西在住の78歳男性は一昨年、ケガで入院して手術を受けた後、退院する際に集まった2人の息子とそれぞれの妻の4人を前に、自分が死んだ後の財産分与について話したというが、「失敗だった」と振り返る。
「長男は東京で就職し、次男夫婦は私と同居している。だから自宅は次男に相続させ、預貯金は2人で分けてほしいと伝えました。自宅を継ぐと、墓を守ったりと色々費用がかかるから、多少、次男に手厚くしたいという話もしました。
すると後日、長男が“配分に納得できない”と言い出したのです。どうも、一緒に話を聞いていた長男の妻から文句が出たようです。コロナが収束したら、息子たちだけを呼んでもう一度、話をしなくてはならないと思っています」