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認知症の母と同居した60代男性の後悔「夫婦の間にも消えない溝が…」

高齢のひとり親が認知症になった場合のリスクとは(イメージ)

高齢のひとり親が認知症になった場合のリスクとは(イメージ)

 2025年には、65歳以上の5人に1人が発症すると予測される認知症。国民病ともいえるこの病を患った親との同居には大きな困難が生じる。ひとり暮らしの母親が認知症になった自動車部品販売経営者(68)のケースを見てみよう。

 妻はそれとなく老人ホームを勧めたが、男性は手塩にかけて育ててくれた母親を施設に入れることを不憫に思い、「一緒に暮らそう」と呼びかけて同居を始めた。

「最初は妻も文句を言わず世話をしてくれましたが、認知症の症状から母が『嫁が私の財布からお金を盗った』と言い出し状況が一変。妄想とわかっていても妻の機嫌は悪くなり、母と妻は次第に険悪になりました。

 母が文句ばかり言うので私がついカッとなって叱ると、被害妄想がますます悪化した。まだ寝たきりなら介護のやりようがありますが、なまじ元気なだけに母の“口撃”が収まらず、家庭内の人間関係がどんどん悪くなりました。

 妻は結局のところ他人なので、白けてしまい母の介護がおざなりになった。私はそんな妻が気に入らず、夫婦仲までもギクシャクしました。出口の見えないまま時間だけが流れ、結果的に母の症状がさらに悪化したタイミングでようやく施設に入れることを決めた。そこから半年ほどで母が亡くなり、夫婦にも消えない溝が残りました。最初から施設に入れておけばよかったと思うし、同居には後悔しかありません」

 二世帯住宅でも同様のリスクがある。住宅の構造上、お互いに干渉することは少ないと思っていても、「在宅ひとり親」が認知症になれば、そういうわけにはいかない。母の介護経験のある50代専業主婦が振り返る。

「もともと二世帯住宅に住んでいて、父が亡くなってもそのまま母と二世帯同居を続けました。ところが母は父を亡くしたショックで認知症が進み、鍋に火をつけっぱなしにしたり、ご飯を食べ忘れるようになった。火の不始末や母の健康が心配になり、起きている間はほとんど母の様子をうかがう生活になりました。やがて母は近所を半裸で徘徊したり、見えないものを見えると言い出すようになり、夫と相談して施設に入ってもらうことになりました」

※週刊ポスト2021年4月30日号

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