ネットを中心に使われる言葉のひとつに「謝ったら死ぬ病」というものがある。これは、自分に非があることをわかっているにもかかわらず、己の正当性を延々と主張し、絶対に謝らない人たちを揶揄する言葉である。周囲の人たちは「さっさと謝っちゃえばラクなのに……」と思うのだが、当の本人はなぜか謝ることができない。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏(47)は、最近「スパッと謝って気がラクになった」という経験をしたという。中川氏が自身の体験をもとに、人間関係における謝罪の重要性を考察する。
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先日、地元の会合でちょっとしたいざこざがありました。東京から友人がやってきたため、地元・唐津の人たちで迎えたのです。イカを釣ってそれを馴染みの料理店に持って行き、刺身やテンプラにしてもらいました。皆が笑顔で非常に楽しいひと時でした。
その時のメンバーの中に、初対面だった地元の27歳のA氏もいました。会が盛り上がる中で、A氏のとある行動が私の勘に触り「この野郎、帰れ!」と怒鳴ってしまいました。
原因はどうであれ、A氏は自分にとって初対面の人が多い中、20歳も年上の人間にこう言われたら従わざるを得ません。
その後どうなったかといえば、お恥ずかしいことに私はとてつもない自己嫌悪に陥りました。若者のちょっとした粗相に対してなんであそこまで強い口調で怒ってしまったんだろうか。せいぜい「Aさん、それは辞めた方がいいよ~(笑)」ぐらいで良かったんです。
翌日、東京から来た別の友人に、その思いを伝えたところ、「中川さんがそんなに気にするんなら、こっちから謝った方がラクになるのでは?」と言われました。ただ、この段階では自己嫌悪感はあったものの「Aさんが悪いんだから、謝るのはAさんのほうだ。自分の怒りは正当である」と、自分の行為を肯定しようとしていました。