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災害後に修理業者との「保険」を巡るトラブルが急増 悪徳業者の見分け方

2018年以降の災害が火災保険の支払い保険金上位の半数を占める

2018年以降の災害が火災保険の支払い保険金上位の半数を占める

 近年、大型台風や洪水といった自然災害が猛威を振るい甚大な被害をもたらしているが、それに伴い「保険詐欺」が増えている。2020年度に国民生活センターに寄せられた火災保険をめぐるトラブルの相談件数は、前年の2倍、5447件が報告されている。

 具体的には、修理業者が「保険金で無料で修理できる」「保険金請求手続きを代行する」と騙り、実際には保険金の支払い以上に修理費用がかかって自腹を切らされた、解約しようとしたら違約金を支払わされた、といったトラブルがあるという。そうしたトラブルに巻き込まれないために、どう対処するべきか。

「火災保険を巡るトラブルは、大きく2種類に分けられます」

 そう指摘するのは日本損害保険協会広報室長の樋川明則氏だ。

「ひとつは『契約者が騙される』タイプで、もうひとつは『契約者が不正請求に加担する』タイプです。前者は契約を強引に結ばされるといった被害。後者は業者と組んで保険金を水増し請求したり、嘘の理由で保険請求をするといったケースです」

 消費者問題に詳しい造力総合法律事務所の造力宣彦弁護士が、法律面から解説する。

「訪問販売のかたちで契約をしてしまったのであれば、8日以内ならクーリングオフが有効になり、契約解除が可能です。一方、業者が屋根をわざと壊したり、保険金の水増し請求をするのを黙認した場合は保険金詐欺の共犯で10年以下の懲役などに問われる可能性があります」

 ただし、「これはあくまで教科書的な話で、火災保険詐欺のカラクリはそう単純ではない」と造力氏が続ける。

「『保険会社からお金さえもらえれば修理はしなくてもいい』という考えの契約者が増え、それを業者がターゲットにしていることが問題です。『保険金の3~5割などの手数料を払えば手続きを代行します』という業者の言葉を鵜呑みにして本来全く払う必要のない3割を業者に払って、保険金額の7割をもらうだけでも満足してしまうのです。

 ただし、そもそもこういった代行業者は不要です。3~5割の成功報酬を受け取る行為は、それ自体が暴利行為などの理由で無効となる可能性があります」

 法的に責任が問われるのかどうかの線引きが難しい側面もある。予定していた保険金が満額下りなくて工事ができず、高額な違約金などを巡りトラブルになってはじめて表沙汰になるといったケースが多い。

 保険コンサルティングを行なう保険ヴィレッジ代表の斎藤慎治氏は、「犯罪というかたちを立証するのが難しい」と指摘する。

「契約者が不正請求に加担したことになるのか、これについては判断が困難な部分もあります。例えば、契約者本人が屋根に上がって点検をすることは難しく、業者の報告を信じるしかありません。業者側からすれば契約者に入った保険金から報酬を受け取っただけとなり、それを犯罪として立証するのは難しいでしょう。

 そのため、保険会社から刑事告訴をするという事例はそれほど多くなく、まさに“隙間を突いた犯罪”と言えます」(斎藤氏)

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