日本人の平均年収は、1997年の467万円をピークに、2020年の433万円まで、約20年で30万円以上減ってしまった。わが国は世界でもトップレベルで安全で、清潔で、豊かな国のはずだが──。
ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のダニエル・カーネマン氏の大規模調査によれば、アメリカで「最も幸福度が高い年収は7万5000ドル」。現在の日本円にして約850万円だ。この金額を境に、幸福度は横ばいになるという。
一方、大阪大学社会経済研究所の調査では、年収500万円までは、収入が増えるほど幸福度は上がるが、そこから900万円までは横ばい。そしてなんと、年収1500万円以上は、金額が上がるにつれて幸福度は少しずつ下がっていく。
内閣府の最新の調査でも、最も満足度が高いのは年収2000万~3000万円の層で、それ以上になると満足度はゆっくりと下降する。満足度が最も低い年収100万円未満の“貧困層”ほどではないにしろ、年収1億円以上の“最富裕層”の満足度は、世帯年収を10段階に分けた中で、下から5番目だった。
家計コンサルタントの八ツ井慶子さんは、お金があるからといって、必ずしもそれだけでは幸せにはなれないと話す。
「1500万円以上の年収を稼ぎ出すための苦労や、お金をめぐるトラブルなどが増えるのかもしれません。人生はお金がすべてではないと、家計相談をしてきてつくづく実感しています」(八ツ井さん)
貧乏すぎても、裕福すぎても幸せにはなれないなら、幸せになるためには、どれくらいのお金があればいいのだろうか。
30万円のバッグはすぐ飽きる
そもそも、「幸せ」とは何か。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所で幸福学を研究する前野マドカさんが言う。
「日本人は“幸せ”といえば“たくさんお金を持っていること”をイメージしがち。お金があることは、もちろん一種の幸せですが、人の幸せはそれだけではありません」