現在、世界的に導入が進む新型コロナウイルスの「ワクチンパスポート」。日本では、年内にもスマホなどでワクチン接種証明書や陰性証明書を表示するデジタルのワクチンパスポートが導入される方針で、10月に入ってからは旅行会社や飲食店の協力を得て、実証実験も行われている。
着実に導入が進むワクチンパスポートだが課題は残る。最も懸念されるのは差別や偏見につながることだ。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが話す。
「ワクチンを打ちたくない人や、持病やアレルギーなどで接種できない人にも権利と自由があります。非接種だからと不当な不利益を与えることは避けるべき」
ワクチンパスポート反対デモが暴徒化したフランスは「検査の有料化」を断行した。パリ在住のジャーナリスト・羽生のり子さんが語る。
「非接種者は、抗原検査やPCR検査の陰性証明書がワクチンパスポートの代わりになります。しかし健康保険に加入していれば無料だった抗原検査やPCR検査が、最近になって有料化(約3000~6000円)されました。打ちたくない人は“まるで兵糧攻めだ”と憤っています」
今後は、「パスポート不要」の店に非接種者が大挙して集まる可能性もある。
「あまりルールを厳格にすると、行き場をなくした大勢の非接種者がワクチンパスポート不要を謳う店に集まり、そこから感染が拡大する恐れがあります。さらに、再び感染拡大の危機が訪れた際にワクチンパスポートを持っていない人が感染したら、医療体制が不充分な病院が別の病院に治療を要請する“患者のたらい回し”が生じるかもしれません」(一石さん)
偽造ワクチンパスポートも心配だ。現にアメリカのカリフォルニア州では、偽造ワクチンパスポートを1枚20ドルで販売したバーの店主が刑事告発された。またオーストラリアでは、セキュリティーの専門家が「ワクチンパスポートは簡単に偽造できる」と発言して大騒動になった。