葬儀の喪主は一般的に配偶者が故人の長男などが務めるケースが多いとされるが、故人の意向で喪主を指名することは法律上、問題ないのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
難治のがんを告知されたジジイです。妻は先に旅立ちました。その妻との間に、2人の成人した息子がいます。長男とは仲が悪く、今では連絡も取っていません。それでも、私が死ねば、長男が喪主になるはず。それが我慢できないので、次男に務めてほしいのですが、生前に葬式の喪主を指名できますか。
【回答】
民法では、祭祀に関する承継について相続人が被相続人の権利義務を相続することになる遺産相続の規定の適用を排除し、原則として慣習に従い、祖先の祭祀を主宰すべき者が祭祀財産を承継するが、被相続人が祭祀承継者を指定すれば、その人物が承継し、いずれもいない場合には、家庭裁判所が承継者を決定するとしています。
この規定は、系図や位牌、墓の権利などの祭祀財産の帰属に関するものですが、多くの場合、「祭祀を主宰すべき者」が喪主になります。仮に、次男を喪主にしたければ、祭祀承継者に指定すればよいのですが、争いにならないよう文書にて指定、かつ生前に関係者に周知しておく必要があります。
慣習に従い、祭祀承継者が決まるのが原則とされているように、世間の見方が喪主の決定にも影響します。配偶者がいなければ、通常は長子が喪主になるケースが多いようです。あなたの意思を周囲が知らないようだと、長男が葬式の喪主になる可能性があります。