国産サツマイモを今後増産しバイオ燃料にまわすと、日本で消費するエネルギー分はまるごとイモでカバーできる──そう確信するのは、近畿大学生物理工学部教授の鈴木高広氏だ。
二酸化炭素を吸収して成長する植物は、脱炭素化へ向けた次世代自然エネルギーにふさわしい。なかでもサツマイモは、江戸時代に飢饉対策として栽培を奨励されたほど天候不順下でもすくすく育ち、一定収量を確実に確保できる優秀な農作物である。
サツマイモを燃料に変えるプロセスは、醗酵。サツマイモ、汚泥を含む水、厳選した菌を密閉容器に入れ、35℃の環境下に置く。最初はサツマイモの糖と炭水化物を食べて有機酸を生む菌が活動し、続いてその有機酸を食べてメタンガスを生むメタン生成菌が活動開始。最終的に、発生した気体の6割がメタンガスとして回収できる。
メタンガスは都市ガスの成分で、醗酵システムさえ整えばすぐ日本全国に普及できる。とくに、各家庭ごとにガスで発電して湯を沸かす家庭用燃料電池「エネファーム」が、サツマイモ発電とは好相性だと鈴木氏は見込む。また、輸入石油からつくるガソリンの値段は現在、1メガジュールあたり5円。「サツマイモ燃料なら1メガジュール4円に値下げ可能」と鈴木氏は試算する。
一家に1台設置されたイモ由来のメタン醗酵&発電システムで電気と湯を供給する未来がやって来るかもしれない。
※週刊ポスト2022年1月14・21日号