岸田文雄内閣による経済政策を厳しく批判してきた経営コンサルタントの大前研一氏。そんな大前氏が、「Go To事業の再開」、「コロナ国産ワクチンの開発・製造への投資」、「国土強靭化策」、「看護師、介護士らの給与引き上げ」について分析・評価する。
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【Go To事業の再開】
余計なお世話である。地方自治体が旅行客に何らかのインセンティブ(補助金など)をつけるのはよいと思うが、個人金融資産をたくさん持っている富裕層に国内旅行や飲食でもっとお金を使わせる方法を考えれば、それも必要ない。
日本は、全国各地に素晴らしい自然景観や旨い山海の珍味があるので、政府がGo To事業に税金を使わなくても、地方自治体とJR、航空会社、旅行代理店などが協力して知恵を絞れば、旅行客を呼び込む仕掛けはいくらでも工夫できる。
そのほうが、ポイント競争が熾烈になり、地方自治体から仲介サイトを運営する代行業者に流れる手数料が莫大になっている「ふるさと納税」(=税制を歪め、さもしい日本人を増やす世紀の愚策)より、よほど地域振興のためになるはずだ。
【新型コロナウイルス対応で国産ワクチンと治療薬の開発・製造に5000億円規模の投資】
時すでに遅し、である。第二次世界大戦が終わってから戦艦大和の設計・建造にカネを投じるに等しい。次の感染症に備えるならともかく、新型コロナ対応は1年前にファイザー、モデルナ、アストラゼネカなどがワクチンを開発した時点で終わっている。もはや国産ワクチンや国産治療薬にこだわる必要はない。5000億円で海外の製薬会社から買えばよいのである。