コロナ倒産が続出するなかで、過去に幾度も危機を乗り越え、今年、創業100年を迎える「百寿企業」がある。
今から遡ること100年前の1922年。日本は第一次大戦後の好況が終焉し、戦後不況に突入した。1922年には石井定七商店の破綻を機に起きた金融恐慌が日本経済を襲い、翌年には約10万5000人の死者・行方不明者が出た関東大震災が発生するなど、苦難が続く時代だった。
お好み焼き用ソースなどで知られる調味料メーカーのオタフクソースは、そんな激動の1922年に創業された企業のひとつだ。広島市で産声を上げたが、100年の歴史のなかでは試練もあった。
「創業者の佐々木清一が妻とともに広島市で始めた醤油類の卸と酒の小売りがルーツです。その後、お酢の製造も始めましたが、1945年に広島に原爆が投下されて、工場と佐々木の自宅が全焼しました」(オタフクホールディングス執行役員・広報部部長の大内康隆氏)
多くの物を失った佐々木氏は、凄惨を極めた広島に、食を通じて「福」を広めたいとの思いで食堂を始めた。
やがて資金が貯まり、製造環境が整ったことで、酢の醸造を再開。1950年にソース製造に着手したが、後発組のためどこにも扱ってもらえなかった。
そこで目をつけたのが「お好み焼き」だった。