世界的なインフレを加速させる要因となるのだろうか──。中国ではカリウム肥料価格の上昇が目立ち始めた。塩湖股フェン(000792)が12月末、2021年1月のカリウム肥料(塩化カリウム、カリウム60%含有の基準製品)の価格を300元/トン引き上げ、3490元/トンにすると発表した。同社は投資家の間ではリチウム電池などに使われる炭酸リチウムの大手メーカーとして認知度が高いが、カリウム肥料生産の大手でもある。
2000年代前半から後半にかけて中国の“爆食”が世界の大きな関心事となったが、穀物の需要が増えれば肥料の需要も増える。グローバルで塩化カリウムの増産が急ピッチで進められた。しかし、増産ペースは実際の需要増加よりも速く、塩化カリウムは深刻な生産過剰に陥った。中国国内では2008年9月をピークに価格は急落、その後長い下落トレンドが続いた。
しかし、2021年初旬にようやく底打ちすると、今度は急騰し始め、足元では底値に対して200%超の上昇率となっている。
その要因は主に2つある。ひとつは、グローバル規模での穀物価格の急騰だ。シカゴ商品先物取引所に上場するトウモロコシ、小麦、大豆などの先物価格は2020年後半あたりをボトムに急騰した。昨年春ごろに一旦ピークアウトして戻したが、後半に入ると再びじりじりと上昇し始めた。
コロナ禍により、生産や流通が影響を受けたといった供給側の要因に加え、そこから経済が回復する過程で穀物需要が伸びるといった見通しが価格を押し上げたと考えられる。穀物の作付面積が増える見通しが、塩化カリウムの需給逼迫、価格上昇を引き起こした。
一方、供給サイドでは思わぬ理由で塩化カリウムが不足する事態が発生した。
塩化カリウムの埋蔵量では、カナダが最も多いが、それにロシア、ベラルーシが続き、中国は第4位である。中国では、カリウム資源が乏しい。長期にわたり輸入に依存する供給構造となっており現在、およそ50%前後を輸入に頼る状態となっている。