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攻略困難な「無理ゲー社会」、生き残る鍵は「ニッチをハックする力」

既存の常識やルールにとらわれることなく、システムの裏をかいて“ハック”する若者たちも登場している(仮想通貨・イーサリアムを考案したヴィタリック・ブテリン。Getty Images)

既存の常識やルールにとらわれることなく、システムの裏をかいて“ハック”する若者たちも登場している(仮想通貨・イーサリアムを考案したヴィタリック・ブテリン。Getty Images)

「自分らしく自由に生きたい」という価値観が世界的に広がる一方で、その難しさを感じる人も少なくない。むしろ、そうした「リベラル化」が、生活に困窮し将来に絶望する若者をかえって追い込んでいるという実態もある。価値観が多様化し、より複雑化した社会をどう生き抜いて行けば良いか。新刊『裏道を行け ディストピア世界をHACKする』(講談社現代新書)が話題の作家・橘玲氏は、「これまでの社会の常識やルールの上で普通に生きていたら取り残される可能性が高い」と語る。橘氏に話を聞いた。

――前著『無理ゲー社会』(小学館新書)の中で橘さんは、攻略が極めて困難なゲーム(無理ゲー)と化した社会に放り込まれた若者たちの実態を明らかにし、最新刊では、無理ゲー社会から脱け出すためには、「普通ではないことをして上を目指すしかない」と提言しています。具体的にはどういう事でしょうか。

橘:世界はいま、「知識社会化、グローバル化、リベラル化」という三位一体の巨大な潮流の中にあり、テクノロジーの指数関数的な進歩を背景に、仕事に要求される知識やスキルのハードルがますます上がっています。人種や国境の壁が低くなりさまざまなイノベーションが生まれる一方で、欧米や日本のような先進国を中心に、急激な変化に翻弄され人生の「攻略」が難しくなったひとたちが、社会からも性愛からも脱落してしまう事態が起きています。

 高度化・複雑化する社会では、これまで通りふつうに生きているだけでは取り残されてしまう。ゲームの世界では、攻略不可能なゲーム(無理ゲー)は“ハック”するしかないとされます。現実世界でも、このことに気づいた一部の(とてつもなく)賢い若者たちが、常識やルールにとらわれることなく、システムの裏をかいて“ハック”することで無理ゲー社会を攻略しています。

 1994年にロシアで生まれ、6歳のときに両親とともにカナダに移住したヴィタリック・ブテリンはブロックチェーン技術の可能性にいち早く興味を持ち、19歳でイーサリアムを考案しました。イーサリアムは、暗号通貨(仮想通貨)であると同時に、ブロックチェーンを使ったP2P(ピア・ツー・ピア)の契約(スマートコントラクト)を可能にするプラットフォームです。国家や企業など契約を管理する中央組織を不要にし、社会の仕組みを根底から覆す技術として注目を集め、若くして莫大な富を築きました。

 5歳のときにブルガリアから両親とともにアメリカに移住したヴラッド・テネブは1986(あるいは1987)年生まれで、20代半ばで大学時代の友人と「スマホで取引できる手数料ゼロの証券会社」ロビンフッドを立ち上げ、またたく間に3000万人以上の顧客を獲得し、上場によってビリオネア(資産10億ドル超)に名を連ねました。「手数料無料」というビジネスモデルも、HFT(高頻度取引)業者からのリベートで収益を上げる「金融市場のハック」です。

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