田代尚機のチャイナ・リサーチ

米中株価が好対照の値動き 米利上げ間近で中国株への資金移動加速も

今年に入って戻り歩調が続くハンセン指数(Getty Images)

今年に入って戻り歩調が続くハンセン指数(Getty Images)

 今年に入ってからの香港ハンセン株価指数はしっかりとした戻り歩調を辿っている。1月6日の場中で安値2万2710ポイントを記録したが、24日の終値は2万4656ポイントを付けており、この間の上昇率は8.6%に達している。

 一方、対照的な値動きとなっているのは米国株式指数だ。特に、NASDAQ総合指数の下落が顕著である。1月4日の場中で1万5852ポイントの高値を付けた後急落、21日は1万3855ポイントで引けており、この間の下落率は12.6%に達している。

 相場の方向性に大きな違いが出ている最大の理由は米中金融政策の違いにあるとみている。

 まず中国だが、景気は決して好調ではない。2020年の四半期ベースの実質経済成長率をみると、順に18.3%、7.9%、4.9%、4.0%とはっきりとした鈍化傾向を示している。当局は2022年の成長率をできれば5.5%程度、最低でも5%程度に設定したいのではないかと予想しているが、そうであれば、10-12月期の成長率は低すぎる。

 こうした景気情勢の中で、中国人民銀行は2021年12月、預金準備率を引き下げた。また、12月、1月と続けて1年物の最優遇貸出金利を引き下げた。1月については5年物も引き下げている。当局は価格、量の両面から金融緩和に動いている。

 習近平政権は昨年から格差是正、不公平、不正をただす政策を打ち出している。当局の指導を守らず拡大路線を続けた不動産企業や、独占禁止法、労働関連法の違反、教育政策、人口対策の妨げとなる経営を行うハイテク企業などに対して、厳しい処分を行っている。今後、こうした長期の発展戦略が変更される可能性は低いとみられる。

 積極財政政策がさらに強化される可能性はあるだろうが、長期の発展戦略に対する悪影響を考えれば、金融緩和政策がマクロコントロールの中心になるだろう。つまり、中国の金融緩和はしばらく続きそうである。

 香港金融市場はあくまでオフショア市場であり、需給面において中国本土の金融緩和の効果が直接作用するわけではない。しかし、現在では、ストックコネクトを通じて本土投資家が香港株を売買するルートが開かれている。本土での需給好転は本土からの資金流入を通じて香港市場を刺激する効果がある。

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