NHK放送文化研究所が2020年に実施した「国民生活時間調査」によると、16~19歳では一日にテレビを視聴する人が5割を下回り、20代以下は一日にテレビを視聴する時間よりもネットを利用する時間のほうが多かった。こうした苦境で放送業界全体がビジネスモデルの転換を迫られている。
一方では、大手ディスカウントストアのドン・キホーテが昨年12月に発売した「ネット動画専用スマートTV」が放送業界をザワつかせている。このテレビは「放送法64条1項に規定する協会の放送を受信することのできる受信設備にあたらないため、受信契約の必要はありません」(NHK広報局)という。そんな「受信料不要テレビ」の台頭もあり、NHKも岐路に立たされている。
先手を打ったのがケーブルテレビや衛星放送だ。
J:COMはNetflixとケーブルテレビをセットにしたコースを2020年に開始。WOWOWやスカパーJSATは昨年から、衛星放送の加入契約がない視聴者にも動画配信サービスを提供し、番組をスマホやパソコンで視聴しやすくした。
一方で後れを取ったのが民放である。嘉悦大学教授で元内閣官房参与の高橋洋一氏が語る。
「世界各国のテレビ局がネット配信を進めるなか、日本の民放は消極的です。これはキー局がネット配信をすると、キー局の番組を放送する地方局のコンテンツ力が低下するからで、キー局と地方局の縦の関係がネット配信を阻んでいます。
逆に言えば、テレビ局がネット配信をしないのでNetflixなどの動画配信サービスがどんどん伸びていった。受信料不要テレビの台頭に拍車をかけたのは、民放の消極的な姿勢です」