選り好みさえしなければ、誰でも大学に進学できる「大学全入時代」がすぐそこまで来ている。文部科学省の学校基本調査によると、2020年度の大学進学率は過去最高の54.4%を記録。少子化の一方で大学・学部の新設も相次いでおり、2023年か2024年にも大学の定員総数が志願者を上回る見込みだ。
そうしたなか、各大学は志願者の確保に躍起だ。特に地方の低偏差値私立大学などは定員割れが相次ぎ、ライバル大学から受験者を奪うべく、熾烈な争奪戦が繰り広げられている。
その打開策として、学生を過度に「お客様」扱いし、イメージアップに腐心する大学も少なくないのが現実だ。こうした事態の弊害なのか、大学教員からは「近年、モンスター学生が増加している」という声も聞こえてくる。私立大学の経済学部で教えるAさん(50代男性)が語る。
「長いこと大学教員をしてきましたが、ここ5年ほどでしょうか、学生の要求がどんどんエスカレートしているのを感じます。昔の学生であれば、単位が落とされたら自分の成績が悪かったせいだと納得したものですが、今では『なんで落とされたのか説明しろ!』と攻撃的に訴えかけてくる学生が少なくありません。
『あなたのレポートはコピペだからです』『要件を満たしていないからです』などと個別に説明すると、それには一切返事がなく、なかにはSNSに教員へのクレームや悪口を書く学生すらいる始末。いつからこうなったのか、悲しいですね」(Aさん)
大学事務は教員よりも学生を優先
私大に勤務し、母国の文化産業などについて講義をしている外国人教員のBさん(40代女性)も、学生から過剰な苦情を受けることは少なくないという。
「私が勤務する大学は偏差値50を少し下回るくらいの私立大学です。日本で大学教員ができることは母国の両親もとても喜んでいて、私も誇りに感じていました。しかし、いざ働き始めたら、学生たちの実態は想像とは大きく異なっていた……。
たとえば、レポートを課すと、外国人以上に日本語が書けない学生も珍しくないのです。先日、ある学生にレポートの再提出を求めたところ、大学の事務に『外国人教員がパワハラをする』と訴えられました。
また、何度『ネットのコピペはダメ』と教えても、文章の語尾などを変えてコピペレポートを提出する。そこで注意したところ、今度は学生と保護者から大学にクレームが入ったこともあります。大学事務は、教員よりも学生を優先する傾向があるので、『クレームが来ないように授業をしてください』と私に通達してきました」(Bさん)