せっかく貯めた老後資金も、不要な支出を見直さなければあっという間に消えて無くなってしまう。たとえば老後に出費がかさむ理由の1つに、子供や孫への資金援助がある。だが、やり方を間違えてしまうと、老後資金が底をつくだけでなく、家族関係にもヒビが入ってしまう。
山形県の奥山涼子さん(71才・仮名)が言う。
「3人の子供がそれぞれ家庭を持ち、いまでは5人の孫に恵まれています。初孫と2人目の孫には、おもちゃや入学祝い、塾代の援助など、お金を惜しまず渡していました。後から生まれた3人の孫にも同じようにしてあげたいのですが、さすがに余裕がなくなってしまい、いまは夫婦で生活するのがやっとです。しかも“姉さんの子にはひな人形を買ってあげていたのに”と、きょうだい仲が険悪になってしまいました」
プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんは、自分たちの老後資金を第一に確保したうえで、子供や孫たちの成長を踏まえたライフイベント表をつくるといいと話す。
「まず“80才になる頃には施設に入居する”“家のリフォームが必要になりそう”など、自分たちの老後計画を練り、その後で、孫が生まれたら何年後にどんなイベントがあるか、おおまかにでも把握しておけば、トラブルを防ぐのに役立ちます」
そもそも、子供や孫にお金を渡すのは、デメリットも大きい。老後資金を取り崩すことになるだけでなく、自分たちか子供のどちらかが本当に困ったときに「お金ありき」の関係になる恐れもある。ファイナンシャルプランナーの横川由理さんが言う。
「老後資金が足りなくなって困るのは自分たち夫婦で、それで子供を頼るようになっては本末転倒です。使わなかったお金は、自分たちが亡くなったら自動的に子供のものになるので、先に渡しておく必要はないと考えて。“いまからお金をあげていたら、私たちが長生きしたときに、あなたたちを頼ることになってしまうかもしれない。それだけは避けたい”などと伝えてください」