ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)の2022年3月期連結決算(国際会計基準)は、純損益が1兆7080億円の赤字となった。好調な携帯事業がありながら減益になった原因は、2017年に「10兆円ファンド」として鳴り物入りで立ち上げた投資事業「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」にある。
今年に入ってから米国の利上げ方針やロシアのウクライナ侵攻を受けて、ソフトバンクGの投資先企業の株価が急落したことで巨額の損失を計上。昨年の決算発表時は26.1兆円あった時価純資産(※)は、18.5兆円となり、たった1年間で約7兆6000億円も減少してしまった。
【※投資会社や投資ファンドが企業の価値や業績を評価する際の指標で、時価で計算した資産総額から負債を差し引いた金額のこと】
孫正義社長(64)はIT起業家として名を馳せてきたが、現在の実態は巨大ファンドを運営する「資本家」だ。そして、投資には当然ながらリスクがつきまとってくるのだ。
ソフトバンクGには顕在化しかねない2つの「不安要素」がある。1つは、すでに株価下落の引き金となっている米国のさらなる「利上げ」だ。経済ジャーナリストの大西康之が語る。
「孫さんの“天敵”になりそうなのが、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長です。米国はリーマンショック以降、量的緩和を続けて株高を下支えしてきましたが、やっと覚悟を決めてインフレ対策のための本格的な金融引き締めに入った。今回は腰を据えて、多少強引にでも利上げを続けるでしょう。SVFの投資先は多くが米国市場に上場するスタートアップ企業のため、この流れは非常に厳しい」