各社の2022年3月期決算が出揃ったが、企業によって業績に明暗が分かれている。主力商品のひとつとしてゲームを手掛ける業界の場合はどうか。
コロナ禍で『あつまれどうぶつの森』が大ヒットし、絶好調だった任天堂が、2022年3月期決算では失速が明らかになった。売上高は1兆6953億円で前期比3.6%減、営業利益は5928億円で7.5%減。「ニンテンドースイッチ」の出荷台数も、577万台減の2306万台である。
任天堂を尻目に大きく伸びたのが、いまや同じゲームを中心事業に据えたソニーだ。売上高が前期比10.3%増の9兆9215億円、営業利益が25.9%増の1兆2023億円で、ともに過去最高を記録。営業利益1兆円超えは初めてで、日本の製造業ではトヨタに次いで2社目である。
くっきり明暗が分かれた理由について、東海東京調査センターのシニアアナリスト、栗原智也氏はこう語る。
「任天堂が減収減益となった主な理由は、半導体不足によるハードウェアの販売落ち込みと、コストの上昇です。販売台数が20%下がっていますが、売れなかったというより、半導体不足で売るものがなかっただけで、需要が落ちたわけではない。ソフトは『あつ森』の反動減がありましたが、ほぼ横ばいか、微増という水準を保っています」
半導体不足という外的要因が大きく、任天堂の成長に影が差しているわけではないという。
一方のソニーはどうか。
「ゲーム関連だけで比較すれば、任天堂と同じく半導体不足で、2021年度の『プレステ5』の販売台数は目標の1480万台に届かず、1150万台に留まった。プレステ5の場合、キラーコンテンツになるソフトがまだ少ないのが気になるところです」(同前)
ソニーの好業績は映画と音楽の事業が牽引した格好で、ゲーム事業の売上高は3%増と、貢献度はそれほど大きくない。
「ゲームソフトでは任天堂の優位は揺らいでおらず、決して『暗』ではない。ソニーはゲーム単体ではなく、音楽、映画といった分野も組み合わせたエンタメ事業全体の成長を目指している。一つのコンテンツをマルチ展開して活用していく態勢を戦略的に整えているのが強みと言えます」(同前)
※週刊ポスト2022年6月10・17日号