各社の決算を見ると、同じような商品やサービスを提供しているのに、業績に大きな差が出た業界がある。たとえば医薬品業界のケースではどうだろうか。
米リジェネロン社が開発したコロナ治療薬「ロナプリーブ」を販売する中外製薬と、コロナ治療薬とコロナワクチンを自社開発中の塩野義製薬。両社の間では、明暗がはっきり分かれた。
中外製薬は、2022年1~3月期の売上高が3606億円で113.6%増、営業利益も1870億円で192.2%増と、大幅な増収増益を達成。同社は前年の通期(2021年1~12月)でも、売上高27.1%増、営業利益40.1%増で、絶好調と言える状況である。
好調の理由は、やはりロナプリーブ。開発元の米リジェネロン社は、「オミクロン株には効果が低い」としているにもかかわらず、政府が調達したおかげで、ロナプリーブの売上高(2022年1~3月期)として608億円が計上されている。
一方の塩野義製薬の昨年度の売上高(通期)は3351億円で12.8%の増収だが、営業利益は1103億円で6.1%の減益。塩野義はコロナ経口薬「S-217622」の治験を7月に開始し、2021年中に製造販売の承認申請を目指していたが、果たせなかった。
ただし、薬事日報副編集局長の柴田高博氏はこう言う。
「私自身は明暗が分かれたとは全く思いません。中外も塩野義も経営状況は非常に良い。営業利益率は中外が43.4%(2021年1~12月)と非常に高く、塩野義も32.9%と高い。経営状態は共に良いと見るべきです。
塩野義は確かに今期は減益ですが、これはコロナ経口薬の開発費用が掛かっているから。今期はコロナ経口薬と開発中のコロナワクチンで、1100億円の売り上げを見込んでいる。売上高3351億円の会社で1100億円ですから大きいですよ」
新薬と新ワクチンで逆転する可能性もある。
※週刊ポスト2022年6月10・17日号
【*追記:本誌掲載時に柴田氏の所属と名前の表記に誤りがありましたので訂正いたしました】