飲食業や旅行・運輸などと並んで、コロナで深刻な打撃を被った百貨店業界。いまだ回復の糸口が見えないが、業績の中身を細かく見ていくと、そのなかでも明暗がわかれていることがわかる。百貨店業界で唯一気を吐いているのが丸井グループだ。
2022年3月期連結決算では、売上高は2093億円で前年比の1.5%増、営業利益が368億円で前年比の141.6%増となっている。
一方、最大手の三越伊勢丹ホールディングスは2022年3月期連結決算で、売上高は4183億円で27.1%減、営業利益は59億円で、会計処理が変更されたため増減率は発表していないが、百貨店業は営業損失63億円を計上し、2期連続の赤字となっている。
これほど明暗が分かれたのはなぜか。やらまいかマーケティングの流通アナリスト、渡辺広明氏はこういう。
「丸井グループはグループ総取扱高で初めて3兆円を上回り過去最高を達成したが、小売業は厳しく、収益の多くを担っているのは2006年から発行している『エポスカード』です。若い世代に人気で、カードのリボ払いやキャッシングによる金利手数料で稼いでいる。
百貨店ビジネスは中長期的に厳しい業態ですが、三越伊勢丹の場合、外商は比較的好調で、デパ地下も可能性はまだある。丸井にしても、中長期的に見れば、少子化で若者が減っていくので、厳しくなる。どちらもシニアの富裕層ビジネスをどう深掘りしていくかが今後のポイントだと思います」
コロナで大打撃を受けた百貨店は、どう生き残っているのか。
※週刊ポスト2022年6月10・17日号