先行きの見えにくい展開が続いている株式市場。IPO(新規上場)市場も全体的に話題は少なく、以前ほどのにぎわいが見られない。こうした環境下でIPO投資を考えるなら、どのような戦略が有効となるのか。投資情報サイト「IPOジャパン」編集長・西堀敬氏が解説する。
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2022年4月の東証再編以降、上場基準が改められたことで、新興企業を中心とする「グロース市場」から、大企業を中心とする「プライム市場」への市場変更が非常に難しくなった。そのため、これまで東証1部昇格が有望視される新興市場銘柄を先回りして、大量に買っていた機関投資家が、いまやグロース市場銘柄に目を向けなくなり、IPO市場全体も厳しさを増しているのが現状である。
実際、2022年1~4月にIPOした全24銘柄の上場初値と5月27日の株価(終値)を見ると、何と20銘柄が上場初値より値下がりしている。そうした厳しい環境の中で、いまIPO投資をする際の戦略としては、原則として上場初値では買わず、その後の値上がりタイミングを見据えた“セカンダリー投資”狙いに専念することが得策だろう。
セカンダリー投資の銘柄選びのポイントは、まずEPS(1株当たり純利益)を着実に伸ばしている企業に注目する。現状を見ると、赤字ながら事業の将来性だけで買われていた銘柄が売られているのに対して、利益を積み重ねる銘柄への資金シフトが進んでいる。
利益を積み重ねていることに加え、配当を出している、株主還元に積極的で自社株買いを行なっている、含み資産が豊富といった要素も、いまの局面の銘柄選びのポイントとしては重要だ。
それから、VC(ベンチャーキャピタル)の株式保有率の高い銘柄は避けたほうが安心だろう。近年、VCが上場前に企業の株式を異様に高い価格で買う、第三者割当増資が頻繁に行なわれてきた。仮にこうした企業がIPOした際には、いまの環境下で公開価格はVCの取得価格を下回るのが通例だろう。したがって、上場前に高い値段で買っているVCの存在が売り圧力になって、その銘柄の株価は上値が抑えられて値上がりしにくいと予想されるからだ。
こうしたVCによる未公開株バブルが隆盛になったことも、現在のIPO市場が厳しい状況にある一因となっているのは間違いない。銘柄選びの際には、IPO目論見書などでVCの株式保有比率と取得株価をチェックすることも重要なポイントといえる。
VCの保有比率が低ければ、将来的に大きな売りが出て、需給が悪くなる懸念は少ない。加えて、決算発表で増収増益に加えて自社株買いなどの株式価値の向上に繋がることが確認され、成長性にも疑問がないという条件が満たされれば、株価は上昇する可能性が大きいはずだ。