身近な親族が亡くなって、遺品を整理中に遺言書が発見されるケースは決して珍しくないが、その取り扱いには注意を要する。司法書士・山口和仁氏が言う。
「被相続人が自筆証書遺言を遺して死亡した場合、法務局に保管されたものでなければ、家裁による検認手続きが必要になります。遺言書を発見した相続人は遅滞なく家裁に提出して、検認請求をしなければなりません。
その後、家裁から検認を行なう日が相続人全員に通知されますが、封印されている自筆証書遺言は、家裁で相続人立ち会いのうえ、開封しなければなりません。検認前に開封してしまった場合、たとえ生前に預かったものだとしても、5万円以下の過料が科されるので注意が必要です」
自筆証書遺言を巡るトラブルを未然に防ぐには、まず専門家に相談するのがベストと言える。遺言書が思わぬ火種になることがあるからだ。司法書士の椎葉基史氏が言う。
「筆跡が本人のものか、作成時に遺言作成の意思能力があったのかなど、相続人同士でもめることがあります。検認手続きには、全相続人を特定する戸籍資料一式や当事者目録が必要となるため、専門家に依頼するのが得策と言えます」
検認のための資料収集、申立書類の作成にかかる費用は3万円前後(その他実費も必要)が相場になる。
さらに、遺言内容に従い、財産の正確かつ公平な引き渡しを行なうために、司法書士を「遺言執行者」に指定することができる。
「誰かが多額の遺産を受け取る場合など、他の相続人ともめて裁判沙汰になることもある。第三者の専門家が執行に関わることで、相続手続き全体の信頼性を担保できます」(同前)
無用な争いを避けるため、相続手続きに時間や労力をかけないためにも、専門家の力を借りるのも一手だ。
※週刊ポスト2022年7月1日号