億単位の資産を築いた投資家のことを、最近では「億り人」と呼ぶ。“株式投資や暗号資産で巨万の富を手に入れた、ほんの一握りの資産家”というイメージがあるが「資産を1億円以上持っている人」と定義すると、億り人は意外なほど多い。
2020年の野村総合研究所の調査では、金融資産1億円以上の世帯は日本全体の2.5%だ。ファイナンシャルプランナーの藤川太さんが言う。
「40世帯に1世帯は億り人という計算です。ごく普通のサラリーマンや、一般的な暮らしをしている人の中にも、億万長者はたくさんいます。普通に働いてコツコツ貯蓄して、それを運用していたら資産が億を超えた、という人が多いのです」
『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』の著者で、都内でサラリーマンをしていた井上はじめさんもそのひとりだ。会社員時代は手取り20万円ほど。工夫をこらした節約生活を心がけ、1億円以上の資産を築いた。
「私の収入が月20万円で、妻の収入が月15万円。私が就職してからの5年間と、結婚後の10年間2人で稼いだ5400万円のうち、3000万円を節約だけで捻出しました。それを元手に運用した結果、現在の総資産額は約1.8億円になりました」(井上さん)
井上さんは徹底した節約で毎月10万円を投資に回したことで、30代で億り人となり、現在も自身を「投資家ではなく節約家」だと語る。億万長者になるための第一歩は「本気の節約」なのだ。
億万長者になる人がまっ先に削るのは「固定費」だ。毎月ある程度決まった金額で、多くの場合、銀行口座やクレジットカードから自動で引き落とされるため「お金を払っている」という意識を持ちづらい。
「以前“月額300円のサブスク会員になるべきかどうか”という相談を受けたことがあります。その相談料は1回3300円。そのサブスクの月額料金の11倍ものお金を払ってまで、固定費を払うことに慎重なのです。
その相談者は、電話代や光熱費など、あらゆる固定費を少しでも安くすることに余念がなかった。“月300円は、年3600円、5年で1万8000円。それに見合うサービスかどうか、ほかの人の判断を聞きたかった”と言うのです」(藤川さん・以下同)